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【更新情報】レディ・グレゴリー『神々と戦士たち』「ルーの到来」

Web サイトにレディ・グレゴリーによるアイルランド神話の再話『神々と戦士たち』の二巻第一章「ルーの到来」の翻訳を追加しました。
フォモール族に苦しめられるトゥアハ・デ・ダナンの救世主となる英雄神、〈長手のルー〉の誕生と生い立ち。

前回、一巻の「トゥアハ・デ・ダナンの到来」を載せたときは更新情報を書き忘れていたので、ここで作者であるレディ・グレゴリーと作品について少し。

レディ・グレゴリーは 1852 年にアイルランドのイギリス系地主階級の家に生まれ、同じ地主階級のかなり年長の夫に嫁いで寡婦となった後、イエィツらの文学運動に共鳴して文筆をこころざします。そのため、主な著作活動期間は、80年の生涯のうち 40 才以降の後半生になりますが、その間、民間伝承の採集から始まり、国民演劇の確立を目指したアビー座の設立と運営、そのアビー座の当たり演目となった数々の喜劇の執筆など、非常に精力的に活動を続けました。

レディ・グレゴリーの比較的初期の著作に属する『神々と戦士たち』は、アイルランドの神話・伝説を英語によって語り直したものであり、北から雲に乗ってアイルランドにやってきたと言われる神の一族トゥアハ・デ・ダナンを扱った第一部と、より後の時代に威勢を誇ったフィアナ戦士団とその首領フィン・マックールを扱った第二部により構成されます。これより先に上梓された、アルスターのコノール・マクネッサ王と赤枝戦士団およびアイルランド最大の英雄クーフリンを扱った『ムルテウネのクーフリン』と合わせて、アイルランドの神話・伝説群をかなり広範にカバーしています。

レディ・グレゴリーがこれらの著作を執筆した動機としては、アイルランドの文学的遺産である神話・伝説をより親しみやすい形で多くの読者に届けたいという思いがあったようです。当時、民族意識の高まりとともに、中世以降に古アイルランド語で写本に記された神話・伝説のテキストやその翻訳が盛んに出版されており、古アイルランド語に詳しくなかった作者は、それらの翻訳や研究資料をもとに、断片的なエピソードの取捨選択や関連付けを行って二冊の本をまとめあげました。

『神々と戦士たち』(それに『ムルテウネのクーフリン』も) は、アイルランド語の影響を受けた英語の方言であるアングロ・アイリッシュを取り入れた文体で書かれています。現代の通常の英語 (アメリカ英語?) に馴染んでいる身からすると、時にまだるっこしい、あるいは古めかしいと感じられますが、おおむね平易でよみやすく、詩的な美しさがあります。

今後、『神々と戦士たち』の第一部をとりあえず途中まで、その後第二部をできるところまで (とにかくエピソードが盛りだくさんなので全部は無理かも) 翻訳して公開できればと思っています。

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